ミケ猫の小部屋

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シュミット分解を軽く証明した

まずはシュミット分解は何かを軽く説明する。ある純粋量子状態 |\psi>があるとする。元の量子システムをAとBの二つのシステムに分けた後、サブシステムの基底を|i>|j>とする。  |\psi>=\sum \lambda_{r} |i>|j> が成立する。ここのrはAとBの中で次元数が低いシステムの次元数に相当する。

AとBが同じ次元の場合

元のシステムは A \otimes Bで表されるので、|\psi >=\displaystyle \sum_i \sum_j a_{ij} |i> |j>は成立する。この形は目標と似ているが、加算する項が多い。 a_{ij}を並べて幅と高さが一致する行列Aにする。Aはユニタリー行列U,Vと対角行列Dの積UDVに書ける。ここではaijをAのi行目j列の要素とする。前の分解によると、 a_{ij}= \sum u_{ik} d_{kk} v_{kj} が成立する。これを代入すれば、|\psi>=\displaystyle \sum_i\sum_j \sum_k u_{ik} d_{kk} v_{kj} |i>|j>がわかる。

そこで、Aシステムの基底|i^k> \displaystyle \sum_i u_{ik} |i>として、Bシステムの基底|j^k>\displaystyle \sum_j v_{kj} |j>とする。そしてDの対角成分d_{kk}\lambda_rにする。そうしたら、 | \psi > = \displaystyle \sum_k d_{kk} |i^k>|j^k> が得られる。

AとBが異なる次元の場合。

その場合、 a_{ij}を並べた行列Aの幅と高さは異なる。従って、Aをユニタリー行列UVと対角行列Dの積に分解することはできない。具体例を挙げると、システムAを三次元にしてシステムBを二次元とする。この場合行列Aは幅が3で高さが2になる。

ここではBシステムの次元数が低い場合を考える。システムBに仮想な補助システムCを導入して。システムCの状態を | 0 > にする。元の量子システムと合わせて全体の状態が |\psi 0>になった。この状態をシステムAとシステム B \otimes Cに均等に分けることができる。さらに、Aの基底を {|i>}としてB \otimes Cの基底を {|j>}とする。

AとBが同じ次元の場合を参考して | \psi 0>=\displaystyle \sum_i \sum_j a_{ij} |i>|j>が成立する。従って | \psi 0 >はシュミット分解ができることはわかる。ここで導入した補助システムCは0状態にいるので、|j>の中のCの成分が0でない時a_{ij}=0。そこからわかることは |\psi 0>=\displaystyle \sum_r \lambda |i>|j>|0>。末尾の|0>を除き取ると、シュミット分解ができた。